図らずもカマシング(上)
日本の夏といえばキンチョー、ではなくて花火。
でもなくて、アジ。
そう、アジなんです。
7月に入ったあたりからアジが釣りたくて蕁麻疹が出そうだったのだ。
というか、実はちょっと出たのだ。蕁麻疹が。わき腹に。
もしかしたらアセモかもしれないけど。
いずれにせよ、アジを釣れば治るような気がする。
ということで14日、アジを釣りに行った。
場所は勝浦。
アジといえば勝浦。
地図を開いてみるとちょっと遠いけれども、しかるべき代金を払って特急に乗れば、時間という点ではあまり遠くない。
東京駅から最速80分で着いちゃうのだ。アジ天国、勝浦に。
12時、会社のY氏と東京駅で待ち合わせ(本当は11時だったらしいが僕が勘違いした)、特急わかしおの自由席にばちっと座った。
勝浦駅に着いたのは13時半くらい。
薄々は気付いていたのだが、風が強い。
しかも勝浦港の苦手とされるらしい南風だ。
多分、外向きのテトラには立てないだろうな、と思った。
まぁ今回はアジ釣りが主たる目的であり、ついでにメジナとかチヌとか鯛っぽいやつも釣れちゃったりして、と妄想していた程度なので、テトラに乗れなくても良いかなと。
しかしそうなると、みんなが内向きに釣るほかなくなる。
ただでさえ混むと言われる勝浦港、内向きに限定されたとしたらさらに混むのではないだろうか。
混みすぎて海に落っこちるような事態になったら困る。
できるだけ隙間を空けるため、みんな横向きで釣ってください、とか、肩車でお願いします、とかも困る。
何にしても一度港に行ってみることにした。
どれほどの混み具合か、とにかく見てみないことは判断がつかない。
場合に依っては興津か小湊、鴨川辺りまで移動するかもしれませぬぞ、とその旨をY氏に伝え、異存なきことを確認した上でいざ港へ。
いきなり道を間違えて遠回りしたが、おかげで町並みを堪能することができた。
さて、なかなか釣りの話が始まらんじゃないか、ラーメンが伸びちまう、と思われたかもしれないが、こういった釣行記でこういった焦らし方をする場合、大きく2つのパターンがある。
すなわち、かなり釣れたため引っぱって引っぱって期待を膨らませて、いい感じで釣れたって話をより印象深く伝えたいがための手段か。
あるいは思うような釣果が得られず、自分でもあまり書きたくないのでただ自然と前置きが長くなり、焦らすつもりじゃないが結果的に焦れちゃう場合か。
今回は無論、後者である。
釣れなかったのだ。
いや、アジは釣れた。2尾(だけ)釣れた。
まぁ、その話はいずれ出てくるだろう。
港に行ってみると、防波堤にはずらりと人が入っている。
付け根の方には入れそうだがスロープになっていて浅そうだ。
Y氏と眉毛を八の字にして協議した結果、とりあえず防波堤の先まで行ってみようと。
今回は無理でも次があるかもしれない。防波堤の雰囲気を見ておくことは重要だ。
あと、テトラがどうなっているのかも見てみたかった。
てくてく歩いて先の方にまで行くと、丁度お終いにするファミリーがいた。
あらラッキー、ってなもんで、そこにするっと入ることにし、ファミリーに状況を聞いてみた。
で、驚いた。
全く、何も釣れないという。
そんなことがあるのだろうか。
ここ外房で、ファミリーはサビキをやっていたようであるが、それで全く何も釣れないとは何事だろう。天変地異ではなかろうか。
少々不安になった。
でもなぁ、インターネットワークの情報に依るとアジが釣れちゃって困るほどだと言うし、どうなんだろうなぁ。
不安なまま、僕は一人で餌を買いに街へ戻った。
餌、ビール(電車釣行の特権)、パン、ナン(間違えて買った)、お茶を買い込み、いざ実釣。
試しに外向きのテトラを見てみると、暴風。向かい風で釣りにならない。
海は少し波っ気があってグレなんかは良さそうだが。風がどうにも強くて断念。
とにかく気合いを入れて釣りを始めた。
まずはウキフカセ。
コマセを撒いて仕掛けを流すと、結構潮が流れている。
上げ5分くらいだったのかな。
すぐに浮きに反応があった。
毎度どうも。勝浦では初めましてですね。くさふぐたん。
旧友にあったような安心感だ。
と共に不安感もある。
不安感というより、しばらくはこいつと遊ぶほかないのか、という絶望感に近い。
だがよく見ると(っていうか見なくても網膜に焼き付いているが)可愛い奴なのだ。膨らんだりして。
ギューギュー鳴いたりして。
食えこそしないものの、こいつらも魚には違いない。
浮きも沈めれば竿もいくらかは曲げる。
くさふぐたんだって悪い奴じゃないんだよ。結局人間の都合で善悪を決めているだけなんだな。
悟り的なものが半開きになりつつも、フグを釣り、仕掛けを作り直し、フグを釣り、仕掛けを…
Y氏はアオイソで浮き釣りをやっている。
イソメを齧られるが針にはかからないと言う。
フグの仕業ですね。
つづく