おセンチ釣行

2010/05/26 Wed 3-minute read

 去る5月15日。

 朝、というか夜中、っていうか4時、パチクリと音を立てて目覚めてしまった。

 ウシが呼んでるぜ… モーって。 …間違えた。海が呼んでるぜ。海が。太平洋が。

 というわけで、とりあえず始発が走るまで「いかにして僕は巨大魚を釣り上げたか」を釣る前から考え、気付いたら7時頃になっていて始発はとっくに出た後であり、まぁ仕方が無い。  いざ、太平洋へ。

 しかし、行く場所も決めていなかった。

 そうだ。外房に行こう。  このところ熱海や伊東、三浦などばかりで、僕が釣りを覚えた地である外房には、とんと行っとらんかった。

 10年ぶりくらいか。  興津漁港。

 千葉に住んでいた頃には原付で行ったりもしたが、それは近いというよりは若かったからだ。  原付で竿をしょって、千葉の低い山を越えて外房まで行ったのだ。

 懐かしいなぁ。

 ノスタルジックだなぁ。

 センチメンタルだなぁ。

 眠いなぁ。

 めんどくさいなぁ。釣り。  外房って遠いしなぁ。。

 危うく二度寝するところだったが、これを逃したら外房なんていつ行くか分からない。  自分で自分に往復ビンタし、軽く脳震盪を起こしつつ準備。

 新宿から特急で一本。  2時間ほどで上総興津に着いた。

 10時前とは言え、釣りをするには少し遅刻だ。

 まぁセンチメンタル釣行ってことで、天気も良いし、釣果は二の次。  存分に感傷的な気分に浸ることにした。

 まず、いつも行っていた釣り餌屋へ。  あのヨボヨボのじいさん、まだ生きてっかな、と少々不謹慎なことを思うものの、いや何が不謹慎なものか、死んでて当たり前なヨボヨボだった。  それだけ時が経ったという事だ。  餌屋があるかも分からない。  あったとして、多分息子が継いでいるのだろう。

 駅から歩くこと10分弱。果たして釣り餌屋は、そこにあった。  そのままの姿であった。

 おお、さては息子が継いだな。さすがにあのヨボヨボの爺さん、生きていても仕事は辛かろう。  戸を開けると、10年前にそうだったように、店の奥のふすまが少し開いていて、人がいる。  人がいて、テレビを観ている。  おおお、そのままだ。10年前のままだ。

 しかもテレビの音が大きい。

 これは… まさか、じいさん… 現役か!?  あんなにヨボヨボだったのに、10年経ってもヨボヨボしたまま仕事を続けているのか!  これは大変なことだ。  僕も頑張って生きねば、と思う。

 もうそれだけで、外房まで来た甲斐があった。  来て良かった。二度寝しなくて良かった。

 僕は店の奥に声を投げた。  じいさん、耳が遠いから大きな声を出さねば聴こえないのだ。

 とりあえずオキアミを3kgと配合餌を買うことにした。  のっそりと店の奥から出てきたヨボヨボのばあさんにその旨を伝え、って、おや? ばあさんだ!

 じいさんじゃない!

 ヨボヨボだけど、じいさんじゃない!

 可能性としては、じいさんが現役を退いてばあさんが継いだか、じいさんが性転換してばあさんになったか、10年前のあのじいさん、実はばあさんだったか。

 何にしても、その店にはオキアミが無かった。

 僕は狐につままれたような気持ちで別の店に行き、餌を買った。

 さて前置きが長くなったが、釣りの方はと言うと。  まずまずだった。

 メジナ23cmくらい1尾。  フグ20尾以上。  豆アジ1尾。

 途中からフグの猛攻に遭い、もう諦めてフグ釣りをしようと思って始めたら意外と面白い。  しかし写真を撮ろうと思ったらパタリと釣れなくなった。

 欲をかいてはいけないという事です。

 僕の隣では地元の幸せ家族がカニを取ったりキスを釣ったりしていて、実に良い気持ちで釣りができた。

 でも、もうしばらくは行かないだろうなぁ。