てんから天国
管理釣り場に行って毎回思うのは、ルアーよりもフライの方が釣れるんじゃないかということだが、もしかしたら単に隣の芝生が青いというような思い込みかもしれない。
そういったことは釣りでは良くあることだ。
ただ、どうだろうか。
管理釣り場にいる魚、ニジマスだとかなんとかトラウトというのは、まぁルアーでも釣れるだろう。
しかしエサとして見た場合、スプーンみたいなルアーよりはフライ、毛鉤の方が形が近いのであって、捕食という観点で考えればこれはもう、毛鉤に分があると思って良いんじゃないか。
管理釣り場にいる魚の主なエサは、管理者が与える固形のペレットだろう。
次に食うエサは自然に飛んでいる羽虫、まさにフライの目指すところである虫。
水面に落ちた虫をがばりと食う。
考えるだに、毛鉤で釣れて当たり前な気がしてくる。
そもそもスプーンなどのルアーは食欲を刺激しているとも限らず、縄張り意識を活用し、何だこの野郎邪魔なんだよ、食っちまうぞ小僧、そういった本能に訴えて釣る釣りなのだと思う。
釣られた魚もさぞやストレスが溜まるだろう。
縄張りを荒らされイライラした上、攻撃したら釣り上げられたとあったら、どんな温厚なトラウトも鼻息が荒くなる。
その点フライはどうだ。
エサだと思って食ってくるのだから、トラウトも幾分幸せな気分で食ってくるに違いない。
まぁ結果的に釣り上げられる点はルアーと変わらないが、あっエサだラッキー、食うぜ俺は、一口でがぶりだぜ、と思ったら釣られたぜ参った、その過程にはルアー釣りにある怨嗟のようなものが皆無であり、どことなく自業自得、食欲に狂って口を開いた私の責任です、と観念したような清々しい目をして釣り上げられてくるような、そんな気がする。
ルアー釣りは、その点どうにも魚に申し訳ない気持ちになる。
いや、食欲を刺激したのなら良い。
三大欲なら仕方ない、とトラウトも諦めるだろう。
それが、相手を怒らせておいて更に釣ってしまう辺りがなぁ。
釣り上げられたトラウトが、歯を食いしばって涙を堪えているような気がするのだ。
つまり、毛鉤の方が釣れるし、釣り方も正々堂々と綺麗なのではないか。
と、長々とした言い訳を考えて買ったのはテンカラロッドとフライのセット。
一番安いものを買ったとはいえ5千円ほどの出費だ。
しかも何となくナイフとかガスコンロとか買っちゃって1万円くらいになった。
でも大丈夫。
だらだらと前述した通り、まず釣れることは間違いない。
その上、ルアー釣りのときに感じる背徳感(実際そんなものは無いのだが)も感じることは無い。
道具は全てナチュラムで購入した。
竿はテンカラ ST33。1980円だった。
フライはナチュラムのセット。ドライBが980円。8個入り。
カディスが1980円。12個入り。
ラインはフロロの4号が良いらしい。
そんな太いハリスは持っておらぬので、近所の釣具屋で購入。
安売り600円くらいのやつを選んだ。
ハリスは1.2号。これは流用。
で、10月16日(土)、それらをカバンにつめて王禅寺に向かった。
さて、結果から書けば入れ食いだった。
到着したのが15時頃で、虫も飛び始めてあちこちでライズがある。
ちゃんと振り込めるか心配だったのだが、ちゃんと振り込まなくても釣れた。
1時間30匹くらいのペース釣れ、僕の下手なルアー釣りよりはずっと良い。
でまた、表層を漂うフライに魚が食い付く、その視覚的な刺激も良い。
掛かってからは竿と糸のみでやり取りする、それも良い。
全部キープするつもりだったのでスカリにぽんぽんと入れていたのだが、釣り急ぐばかりついスカリの口を締め忘れたようで、最終的には2尾しか残っていなかったがそれでも良い。
時合はわずかだった。
1時間も無かったと思う。
暗くなると毛鉤が見えなくなるし、魚の活性も下がる。
こうなるとルアーで中層以下を攻めるのが良いだろう。
まぁ、適材適所ということかな。
ともかく、テンカラ釣りは実に面白い。