てんから地獄
すっかりテンカラの魅力に取り付かれ、寝ても覚めてもテンテンカラカラ、頭のどこかでカラカラと音がするような気持ちである。
電車に乗っても右手はついつい振り込みの練習をしてしまい、前に立っている人の頭を叩く形となり、すみませんすみませんと謝って顔を上げてみると相手の顔がニジマスに見える。
病気だ。
これは大変なことになってきた。
治す手だてはあるのだろうか。
病院に行ったって「精神的に少し疲れているようですね」とか言われて終わるに違いなく、しかしこちらは疲れているどころかテンテンカラカラと元気なのだ。
少々妄想とか幻視とか、そういったあれがあるだけなのだ。
とにかく、医者に頼れないとなったらもう気が済むまで釣るしかないな。
釣り師の思うことは結局そこに行き着く。
何かあったら「釣るしかないな」と、詰まる所、ただ釣りに行きたいだけなのだ。
10月24日(日)、再び王禅寺に行った。
結果から書くと、完敗だ。
ほとんど釣れなかった。
そもそも到着するのが遅すぎた。
16時を過ぎていて、すっかり時合を逃したようだ。
それでも、と釣り始めたらすぐに暗くなってくる。
暗くなったらテンカラはお手上げだ。
仕方なくルアー釣りをし、そちらの釣果もいまいち(これはただ僕が下手なだけ)。
今回はテンカラの練習だと割り切り、テンカラロッドを10分振って20分ルアー釣り、というような感じで時間が過ぎて行った。
家の者におかずを釣ってくるよう言われていたが、何とか晩飯分は確保し、もうだめだ、片付けようとテンカラ竿を畳み始めた。
すると竿が固くてなかなか仕舞えない。
折らないよう慎重に竿を仕舞いつつ、なんだよこれは、2000円の安ロッドにてんてこ舞い、しかも今日は全然釣れなかった、これから原付で1時間かけて帰宅だ、寒い、眠い、腹減った。
涙で竿が見えない。
半べそで何とか竿を畳み、仕掛けを回収すると毛鉤は池の中に入ったまま、引っぱると何かに引っかかったようで抵抗がある。
なんだよ、なんなんだ。この上根がかりか。。
ぐいと引くと、おやどうしたことか、ぐいと引き返す。
もう一度引くと、今度は横にぐんと走る。
なんか釣れてる。。
仕掛けを片付けている間、池の中に落ちていた毛鉤に魚が掛かったようだ。
手で糸を手繰ると、結構大物が掛かっているようで、なかなか難儀である。
うんうん言いながら引っぱり上げると35cmの立派なニジマスだった。
うーむ、手釣りか。
レギュレーション違反であろうが、毛鉤を奥まで飲まれてしまったし、魚を陸揚げしてしまった。
これはキープさせていただくことにした。
手釣り、意外と面白かった。
しかしテンカラは難しいなぁ。早くもスランプだ。